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リアルの価値はこうして作る。入山章栄が「授業」のオープニングでやっている演出 - Business Insider Japan

なぜならYouTubeにせよSpotifyにせよ、デジタルで刺激される感覚は、五感のうちの「視覚」と「聴覚」だけだから。一方で、実際にライブ会場に足を運べば、音が鳴り響く振動を全身で感じたり、その場に集まった人たちと一緒に踊ったり声援を送ったりして、五感すべてが刺激される。そんな感覚はライブでしか得られない。

つまり、今や視覚と聴覚はほぼ0円で楽しめる時代ですが、それ以外の味覚・触覚・嗅覚はその現場に行かないと味わえないので、相対的に価値が上がるのです。だから「自分の好きなアーティストやみんなで盛り上がる雰囲気を五感で味わうには、高いお金を払ってもライブに行きたい」となるわけですね。

BIJ編集部・荒幡

BIJ編集部・荒幡

そう考えると、もしも将来、技術革新が進んで、デジタルでも触覚や嗅覚が体験できるような技術が実用化されたとしたらどうでしょう? それでもライブの価値は変わりませんか?

そうなったら、わざわざライブに行く人は減るかもしれませんね。でも結局、「これが本物だ」「ついにナマで本人を見た」という感覚はやっぱり格別ですよ。たとえ自己満足にせよ、その価値は変わらないはずです。

BIJ編集部・荒幡

BIJ編集部・荒幡

確かに。今や名画をいくらでもネットで見られる時代ですが、パリのオルセー美術館で本物を見れば、「オルセーで見た自分」に満足できそうですね。

これからはいろいろなものが、リアルとデジタルの両建てになると思います。例えば僕が教えている早稲田大学ビジネススクールでは、日本経済新聞と組んでオンライン講座をやっています。オンラインなので、日本中から毎年1000人を超える方々が受講してくださっています。

おそらくこのオンライン授業がきっかけで、実際にうちのビジネススクールに入学を希望する人も増えているでしょう。なぜならうちの教授陣はエッジが立っている人が多いので、「オンラインで面白い授業をしていた、あの先生に直接会って学んでみたい」というニーズが出てくるのだと思いますよ。

「ライブならでは」の付加価値が必要に

編集・小倉

編集・小倉

入山先生みたいに教える側としては、オンライン授業と対面授業とでは、やりやすさや満足感などは違ってくるものでしょうか? 

そうですね。わざわざ授業を受けに来てくれた人は、その分満足させないといけないから、リアルの方のレベルをさらに上げないといけないと考えています。

今の小倉さんの質問で気付きましたが、実際に僕は早稲田ビジネススクールでやっている対面の授業では、臨場感をすごく大事にしていますね。例えば有名な起業家をゲストに呼ぶ「トップ起業家との対話」という授業では、オープニングの演出にも気を付けています。

今年1月にはマネックスグループ会長の松本大さんに来てもらいましたが、授業の冒頭でまず、「マネックスの松本大さんについてどう思いますか」と聞いて、学生たちに議論してもらうんです。そして議論が盛り上がって来たところで、突然ドアが開いて松本さんが教室に入ってくる。歓声と拍手が起きて、それは盛り上がりますよ。

BIJ編集部・荒幡

BIJ編集部・荒幡

まさしくエンターテインメントですね。

授業が終わってからも、可能な限りゲストの方には学生全員と名刺交換をしてもらいます。だからあらかじめゲストの起業家・経営者には「名刺を多めに持ってきてください」とお願いしています。名刺を交換するとき写真撮影もできるし、二言三言、言葉も交わせる。

さらにゲストによっては、授業が終わった後の懇親会に参加してくれることもあります。こういうことは、リアルならではの価値ですよね。

BIJ編集部・荒幡

BIJ編集部・荒幡

分かります。好きなアーティストのライブで、歌詞をアレンジして歌ってくれると、めっちゃ嬉しいですよね。オンラインでもできるようなことは、リアルではメインにしないほうがいいということですね。

リアルとオンラインの差をどうつけるかは、価格設定の問題でもあります。オンラインは広く薄く、大勢の人に知ってもらうため手頃な価格にした方がいい。例えば荒幡さんがYouTubeを配信していたら、だんだんとファンが増えてきて、そのうち荒幡さんに会いたいとか、直接しゃべりたいという人が出てくるでしょう。

そうしたら、「会いたい人はサロンの会員になってください」とか、「課金すればイベントで会えますよ」という設定にすればいい。だから今、ライブの金額が昔より大幅に値上がりしていますよね。

BIJ編集部・荒幡

BIJ編集部・荒幡

先日来日したテイラー・スウィフトなんか、VIP席は10万円超えでしたよ。それでも行きたい人が多いのに驚きます。

そういえば、ニッポン放送のラジオ番組「オードリーのオールナイトニッポン」のイベントを、東京ドームでやりましたよね。

BIJ編集部・荒幡

BIJ編集部・荒幡

そうですそうです。アリーナ席は1万2千円もしたのに、「チケットがとれない!」と嘆いている人が大勢いて、普段あまりあの番組を聞かない私は、「えっ、わざわざお金払って聞きにいくの? いつもラジオで聞けるやつやん!」と思ってしまいました。やはりオフラインの価値が高まっている時代なんですね。

最近はBusiness Insider Japanでもいろいろなイベントを開催することが多いので、そのときは入山先生にもぜひご登壇をお願いします。

もちろん、喜んで!

入山章栄:早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所に勤務した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールアシスタントプロフェッサー。2013年より早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)准教授。2019年から現職。著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』『世界標準の経営理論』など。

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