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祖父の想いと暖簾を継いだ 若き職人が作る濃厚豚骨ラーメン(山路力也) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

後継者不足で暖簾を畳むラーメン店が増えている

1966年創業。「半ちゃんラーメン」発祥とも言われる老舗『さぶちゃん』(東京・神保町)も、2017年に惜しまれつつ閉店した。
1966年創業。「半ちゃんラーメン」発祥とも言われる老舗『さぶちゃん』(東京・神保町)も、2017年に惜しまれつつ閉店した。

 長年愛されてきた老舗飲食店の閉店が相次いでいる。新型コロナウィルスにより外食消費の冷え込みによって閉めてしまう店ももちろんあるが、特に個人飲食店の閉店はここ十年くらいで顕著になっている傾向だ。その大きな理由の一つに後継者不足という問題がある。企業として大規模に展開をしている飲食店であれば、人材も資金もあるため続けることが出来るが、個人経営の飲食店では、代継ぎが上手くいかなければ事業の継続は難しい。

 戦後の復興期から高度成長期にかけて、街中にはラーメン店が雨後の筍のように増えていった。闇市の屋台から始まり、実店舗を構えたというストーリーを持つ老舗ラーメン店は全国にたくさんある。戦後にオープンした店はもう70有余年、高度成長期にオープンした店でも半世紀。当時20代の若さで創業した店主は、いずれも70代以上になっている。家族や親族にしっかりとバトンを渡すことが出来た店は営業を続けていけるが、そうではない場合は止む無く店を畳むしかない。

 かつて飲食店や商店などは「家業」として成立しており、その家に生まれた者は家と店を継ぐことが当たり前だった。戦後、高学歴社会になって価値観も変わり、自分のやりたいことを仕事にするという風潮も生まれ、 飲食店を営む家に生まれたからといってその店を継ぐ価値観はなくなった。ましてや薄利多売で重労働でもある飲食業を自分の子供にもやらせようと思うような親も減っていった。結果として自分が元気なうちは営業を続けて、体力に限界が来た時には店を閉めるという決断をした店主が増え、その端境期に差し掛かっているのが「今」なのだ。

店を継ぎたい孫と店を継がせたくない祖父

1972(昭和47)年創業の老舗『天龍ラーメン』(福岡県糟屋郡)。オープン前から客が集まる人気店だ。
1972(昭和47)年創業の老舗『天龍ラーメン』(福岡県糟屋郡)。オープン前から客が集まる人気店だ。

 福岡県糟屋郡志免町。福岡市内からも車で10数分という場所に一軒のラーメン店がある。店の名前は『天龍ラーメン』(福岡県糟屋郡志免町南里1-3-31)。創業は1972(昭和47)年と半世紀近い歴史を持つ老舗。店名に「龍」がつく店が多いことから、地元のラーメン好きがこの一帯を「ドラゴンロード」と呼ぶこのエリアの中でも屈指の老舗人気店だ。

 この店の厨房に立つ店主の森崎龍之介さんは32歳。自分が生まれる前に祖父母が開いた店を、26歳の時に継いだ「二代目」だ。「祖父母とは同居していたこともあり、子供の頃から毎日仕込みをしている祖父の姿を見ていました。大変そうだけれど格好良いなぁと憧れていましたね」(天龍ラーメン店主 森崎龍之介さん)

 森崎さんにとって、ラーメンは子供の頃から身近な存在。いつかは祖父の店を継ぎたいと思うようになっていったが、親はもちろん当の祖父母からも後を継ぐことを猛反対された。そこには自分がしてきた苦労を孫にはさせたくないという祖父母の優しさがあった。大学卒業後、ラーメンの道を諦めてサラリーマンとして広告営業の仕事に就いた森崎さんだったが、やはり祖父の店を継ぎたいという想いは捨てきれなかった。

 サラリーマンは仕事の成果だけではなく人間関係などで評価される世界。もっとシンプルに自分が作った一杯のラーメンで評価されたい。そう感じた森崎さんは会社を辞めて福岡市内の老舗人気ラーメン店の門を叩き、ラーメンの世界へと飛び込んだ。修業先でスープの取り方や接客など、ラーメンの基礎を学んでいる姿をみて、祖父母も少しずつ森崎さんの想いを理解してくれていった。修業を続けること3年あまり、2014年にようやく許しを得て祖父母の店を継ぐこととなる。森崎さんが26歳の時のことだった。

祖父のラーメンを再構築した新たなラーメン

チャーシューの美味しさに定評がある『天龍ラーメン』の人気メニュー、「「チャーシューメン」と「炙りチャーシュー丼」。
チャーシューの美味しさに定評がある『天龍ラーメン』の人気メニュー、「「チャーシューメン」と「炙りチャーシュー丼」。

 美味しい不味いは人それぞれ。自分が食べて美味しいと思うラーメンを作り、その一杯を評価して欲しい。森崎さんは祖父の味をただ受け継ぐということはせず、自分なりのオリジナルのラーメン作りを目指した。

 濃厚でありながら口当たりは滑らか、濃さだけではなく旨味の「密度」の高いスープが森崎さんの理想とする味。対流が良くなるように昔ながらの「羽釜」を使い一日中炊き続ける。そのスープをもとにさらに豚頭、ゲンコツ、背ガラを継ぎ足しながら作る「呼び戻し」の製法によって日々深みが増していく。

 麺も自分の理想の麺を作るべく、3種の小麦をブレンドした自家製麺にした。肉厚でジューシーなチャーシューは肩ロースを使い、スライサーではなく包丁で手切りしたものを出す。全てが森崎さん自身が納得のいくオリジナル。しかし味の決め手となる「醤油ダレ」は祖父が作ったものを受け継いだ。祖父のラーメンを自分なりの解釈で再構築したものが、森崎さんのたどり着いた新たな『天龍ラーメン』なのだ。

 原価も手間も惜しまずに作った渾身のラーメンは一杯なんと550円という安さ。実はその値段にも森崎さんが祖父から受け継いだ想いが込められている。「祖父母は常日頃『ラーメンは安くて美味しいもの』と言っていました。だから僕のラーメンも安くて美味しいラーメンにしたいんです。子供が自分のおこずかいで食べに来て貰えるような一杯を、これからも作り続けていきたいと思っています」(森崎さん)

※写真は全て筆者によるものです。

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August 30, 2020 at 03:18PM
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