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「シャネル」の“プルミエール”【スタイルを作る名品・定番辞典 vol.24】 - ELLE JAPAN

伝統と進化が生んだデザイン、さらに肌で感じる風格と美学が「名品」の条件。モード史を彩り、私たちの日常を輝かせる名品たちの魅力をお届けする連載。第24回目はガブリエル シャネルというカリスマの美意識を紡ぐ、「シャネル」の傑作ウォッチ“プルミエール″について。

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デザイナーにして、新時代をどんどん切り拓くスタイルアイコン。カリスマティックで、痛快で、究極にエレガント。革新的なデザインの数々よりも先に、「シャネル」創業者、ガブリエル シャネルの真髄は人としての魅力にあるようだ。そんな彼女の精神を受け継ぎ、誕生35周年を迎えたウォッチ、“プルミエール”とは? ウィットに富んだ言葉で自らの人生をさらなる伝説にしたガブリエルに敬意を捧げ、今回は特別に、シャネルが遺した名言とともにお届けしよう。


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© CHANEL

まず知りたい! “プルミエール” が分かる3つのこと

1.「ファッションは移り変わるが、スタイルは永遠」

この言葉が示すように、彼女の築いたスタイルという遺産は次の時代にも継承されている。ガブリエルの逝去から16年後の1987年、メゾン初のウォッチとして誕生したのが“プルミエール”。この1本には“最初”や“一番” という意味と、これからお話しする彼女の信念が込められている。

2.「私より前は、黒を着る勇気のある女性はひとりもいなかった」

初代“プルミエール”を彩り、今も変わらず採用されている漆黒のブラックラッカーのダイヤル。この黒こそガブリエル シャネルの名をフランスからアメリカにまで轟かせた立役者だ。それまで喪服やメイド服でしか使われなかった黒だったが、シャネルはすべての色の魅力を備えた色彩だと見抜いていた。

3.「なぜそこに、あらゆるものをつけたがるの? そんなものは切り捨ててしまいなさい」

豪華絢爛な装飾が当たり前だった時代を経たからこそ、研ぎ澄まされたミニマムなデザインの重要性を発見したガブリエル。それに呼応するように、“プルミエール”も時刻を指し示す数字やインデックスも、秒針もなし。シンプルなのに、着ける者の個性を引き立てる魔法には脱帽。


【1】時代を創った女性

「『シャネル』のスーツは、活発な女性のために作られているの」

fashion designer coco chanel
セットアップのスーツと、重ねづけしたイミテーションパールのネックレスがシグニチャーだったガブリエル シャネル。芯のある女性の、魅力的な横顔が眩しい。1950年代前半。

ApicGetty Images

流行とは、単なる衣服でなく、それをまとうカリスマがいてこそ成就するのだとガブリエル シャネルの人生を振り返るといつも思う。自らが生み出した革新的デザインにとって最高のモデルでい続けられた理由は、間違いなく彼女が新時代のなかで最も「活発な女性」だったからだ。

coco chanel
家の前に佇む、若き日のシャネル。ネックレスのレイヤードやバイカラーシューズまで、後にメゾンを象徴するデザインをすでに取り入れていることに驚き。

SashaGetty Images

考えてみてほしい。時は、ガブリエルが初めてパリに帽子屋をオープンした1910年。世紀末を経て世の価値観が急激に変わりつつあったとはいえ、今よりもっと階級意識が根強かった時代だ。そんなときに孤児院出身のガブリエルが、なぜ英国の王位継承権をもつウエストミンスター公爵やロシアの亡命貴族と、かの有名な恋愛を繰り広げられたか? 答えはシンプル。カリスマと熱意に溢れた彼女から、誰もが目が離せなかったから。

duke of westminster
1925年に撮影された、ウエストミンスター公爵とシャネル。彼を含む貴族や文化人たちとの恋愛のなかで乗馬をたしなみ、メンズウェアやスポーツウェアのヒントを暖めていった。

Hulton ArchiveGetty Images

獅子座の女らしく(シャネルに言わせると「働き者で、勇敢で、誠実で、何があってもへこたれない」そう)、燃え上がるような情熱はあっという間に彼女をスターダムに押し上げる。家族からの援助もない代わりに、伝統や常識に縛られることがなかったのは、デザイナーとしては幸運だったのかもしれない。身分や性別を超え、名士や文化人との恋を通してツイードやジャージー等のメンズウェア素材を取り入れ、究極にシンプルなカットや黒のドレスを「発明」したのは周知の通りだ。

またガブリエルは、モダニティを放つ狂乱の1920年代を愛し、愛されてもいた。第一次世界大戦で消耗された男性のパワーを補うように、女性の社会進出は必然となり、まさに彼女のような「モダンガール」たちが街を闊歩。自身のクチュールハウスをパリ・カンボン通りに構えていたシャネルはその筆頭格で、1921年に発表したフレグランス「N°5」を皮切りに、メイクアップコレクションも発表。1926年にはシグニチャーである黒とシンプリシティと融合させた「リトル ブラック ドレス」が海の向こうでも話題になっていく。

ロミー・シュナイダー, シャネル
第二次世界大戦後、モードの第一線から退いていたガブリエル。1954年に71歳で復活した後は、ロミー・シュナイダー(写真)やジャクリーン・ケネディなど、女優やセレブリティたちに愛された。

Getty Images

ガブリエル シャネル, ジャンヌ モロー
寝床にしていたホテル リッツとは別に、ブティックのあるカンボン通り31番地の建物の部屋にて、女優のジャンヌ・モローと。インテリアからも、異国への興味がよく分かる。

Botti/Stills/Gamma/Eyedea Presse

女性をコルセットから解放するデザインも、機能性を高めたスーツやスポーツウェアも彼女以前から発表されていたが、新時代を拓く若きワーキングウーマン、ガブリエル シャネルがまとうだけで全く違って新鮮に見えたのもうなずける。

自身が後世まで残るファッションアイコンとなり、そしてそのアイコンへ自らドレスを作ったのは、恐らくシャネルだけ。彼女のクリエーションは時代を反映したのではなく、時代そのものを創っていた。太陽のように抗えない魅力と、自分の足で未来を拓くパワー。そして、常識を軽やかに笑い飛ばす反骨精神。過ぎし日の貴族も、コクトーやディアギレフなどの文化人も、そして現代の私たちも、彼女に惹かれる理由はみんな同じだ。


【2】繋がるヘリテージ

「私は、時代に遅れてもいないし、先取りしてもいない。私のファッションは、生活を追いかけているのよ」

chanel
パリ・ヴァンドーム広場を背にして佇む、1937年のガブリエル。ポケットに手を入れ、脚を交差する立ち居振る舞いからもモダニティが漂ってくる。

photo:Roger Schall © Collection Schall

ガブリエル シャネルは、「働かず何もしていない」女性たちが自らを派手派手しく飾ることにしか興味がないさまを、控えめに言っても軽蔑していた。重きをおいていたのは、実用性とエレガンス。新しい時代を生きる女性の「生活」へ向けたデザインは、彼女がこの世を去ってから16年後の1987年、一本の時計となって現れる。そう、当時のアーティスティック ディレクター、ジャック・エリュによる “プルミエール”の誕生だ。

chanel
1987年に発表された、オリジナルの“プルミエール”。メゾン初のウォッチ誕生とあわせ、パリのモンテーニュ通り40番地には、ウォッチブティックの1号店を出店した 。

© CHANEL / Photographer Daniel Jouanneau / Press release for the CHANEL Horlogerie launch / 1987

メゾンが大切にするアイコンを詰め込んだウォッチは、まるでマドモアゼルへのラブレターのよう。まず八角形のウォッチケースは、名作フレグランス「N°5」のボトルストッパーとパリ・ヴァンドーム広場のシルエットから。さらにシャネルの代名詞ともいえる黒を主役に、1955年に発表されたハンドバッグ“2.55”のゴールドチェーンを想起させる、チェーンストラップをあしらって。

chanel
パリ・ヴァンドーム広場を形作るのは、端正な八角形。シャネル自身も、住まいにしていたホテル リッツのスイートルームからこの広場を眺めていたという。

© CHANEL

女性には男性向けの時計を小型化したデザインしかほぼ選択肢がなかった当時、女性の美しい手首を飾るために生まれてきた“プルミエール”。華やかな場ではジュエリーのように、日々のさりげないシーンでは慎ましいシンプリシティを光らせる。まとう人、時間、場所によって印象を変えるウォッチは、多彩な顔をもつモダンな女性たちを魅了する。


【3】タイムレスな1本

「退屈しているときは1,000歳だけど、友だちと楽しんでいるときは、年齢なんて気にならないでしょ?」

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時計“プルミエール オリジナル エディション”(GP×ブラックレザー、クォーツ)¥759,000(2022年10月1日(土)発売予定)/シャネル(シャネル カスタマーケア)

© CHANEL

「シャネル」史上初の時計“プルミエール”が1987年に誕生してから35年。多くのバリエーションを世に送り出してきた“プルミエール“がこの秋さらに研ぎ澄まされ、“プルミエール オリジナル エディション”として再び私たちの時代にお目見えする。タイムレスなエレガンスはそのままに、細かなディテールの変更や、素材などのクオリティ面を現代的にアップデートすることで、今の空気感をまとったアイコンウォッチになっている 。

友達と楽しんだ翌日、さっき生まれたように陽の光を楽しむために。どんな日もワクワクして過ごすために、私たちにはとびきり美しい時計が必要なのだ。

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八角形にかたどられたダイヤルと、エメラルドカットのサファイアクリスタルが“プルミエール”のシグネチャー。

© CHANEL

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同じく八角形のシェイプがアイコニックな、「シャネル」の名香、「N°5」のボトルストッパー。

© CHANEL

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オリジナルと同じ、「シャネル」を象徴するモノトーンのボックスに包まれて。

© CHANEL


【4】秘蔵のギャラリー

「ラグジュアリーは貧しさの対極と信じる人たちがいる。いいえ、ラグジュアリーは下品さの対極にあるのよ」

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1987年の “プルミエール”の初ビジュアルに登場したイネス・ドゥ・ラ・フレサンジュ。今見てもとびきり愛らしい!

© CHANEL / Photographer Karl Lagerfeld / Ines de la Fressange / Première watch press release / 1987

この言葉を体現するアイテムこそ“プルミエール”だと、胸を張って言える。メゾンが大切にしてきた珠玉の写真たちからは、「シャネル」が誇るラグジュアリーの定義が滲み出てくるようだ。美しきビジュアルの世界を、しばし旅しよう!

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貴族出身のイネス・ドゥ・ラ・フレサンジュがもつノーブルな魅力は、当時「シャネル」を率いていたカール・ラガーフェルドのお気に入りだった。1987年。

© CHANEL / Photographer Michel Comte / Ines de la Fressange / Press release for the CHANEL Horlogerie launch /1987

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発表当時から変わらない、所作までも美しく見せる“プルミエール”の魅力。1987年。

© CHANEL / Photographer Dan Torres / Ines de la Fressange / Première watch press release / 1987

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まるでエジプト神話の女神のように、“プルミエール”を重ねづけ。ジュエリーのような魅力をとらえた1987年の1枚。

© Keiichi Tahara, Built Ltd.

chanel photographer guy bourdin
シャープで挑発的な写真で知られるフォトグラファー、ギィ・ブルダンも“プルミエール”をとらえた。アクティブな女性像が伝わってくる貴重な1枚。1987年。

© CHANEL / Photographer Guy Bourdin / Ines de la Fressange / Première watch press release / 1987

chanel, photographer patrick demarchelier, claudia schiffer
スーパーモデル、クラウディア・シファーから漂う’90年代ムードにも呼応する“プルミエール”。時代を超えて愛される、モダニティが表れている。

© CHANEL / Photographer Patrick Demarchelier / Claudia Schiffer / Première watch ad campaign / 1994

シャネル最大のデザインは、意志ある女性の生き方そのもの。そして最大の功績は、自らその生き方を示したこと。意気揚々と未来を創る女性像はやがて1本のウォッチに託され、今、私たちの手首からエレガンスを伝えている。

それではお別れに、皮肉屋の彼女にはいささか感動的すぎるかもしれないこの言葉で、締めくくろう。

「女性にきれいでいてほしい。そして、自由でいてほしい。自由に腕を振って、颯爽と動いてほしい。時代とともに」

chanel

©Lipnitzki / Roger-Viollet / amanaimages

text:MAKIKO OJI

言葉の引用:『CHANEL 自分を語る』(P.モーリエ、J.C.ナピアス編、小沢瑞穂訳、2022)さくら舎

問い合わせ先/シャネル カスタマーケア
https://www.chanel.com/jp/

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