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静岡おでんをおいしく作るコツは牛すじにあり!専門店に家庭でも使える ... - メシ通

こんにちは、酒場案内人の塩見なゆです。

全国から人が集まる東京には数多くの郷土料理のお店があります。地方出身者が駆け込める故郷の味であり、東京で暮らす人にとっては気軽に旅行気分が味わえるすてきなスポットです。アンテナショップを巡るように、東京にある郷土料理のお店を巡ってみませんか。

ということで、今回は静岡おでんが名物の居酒屋「静岡おでんガッツ」をご紹介します。

お店は高田馬場駅から徒歩約3分。静岡おでんの他にも、静岡のさまざまな郷土料理をそろえています。大衆酒場のような手頃な価格で刺身、揚げ物、静岡おでんとさまざまな料理が楽しめる魅力的なお店です。

取材に応じてくれたのは、「静岡おでんガッツ」の店長、市川徳二さん。静岡出身ということで、本場の静岡おでんの作り方や独特の黒いスープの秘密について伺っていきます。

父の味を受け継いで作る静岡おでん

塩見なゆ(以下、塩見):市川さん、どうぞよろしくお願いします。

市川徳二さん(以下、市川さん):よろしくお願いします。「静岡おでんガッツ」は2012年12月にオープンしまして、2022年には10周年を迎えました。コロナ禍は大変でしたが、なんとかやってこられました。

塩見:お店が続いて本当に良かったです!

早速ですが、市川さんが高田馬場静岡おでんのお店をオープンするまでの経緯から教えていただけますか?

市川さん:僕の生まれは静岡市なんですが、実家は角打ちコーナーのある酒屋でした。私が子供の頃の静岡は、駄菓子屋や角打ちなど、いろんなお店が当たり前のように静岡おでんを提供していました。

塩見:静岡おでんは、子供のおやつから、大人のお酒のつまみまで幅広く親しまれていたんですね。

市川さん:通学路にある駄菓子屋は子供の社交場のようになっていて、学校帰りに友達と駄菓子ではなく、静岡おでんをよく食べていました。当時は1串30円ほどで子供が買えるスナック的なものという位置づけでした。

塩見:静岡おでんは駄菓子屋にもあるような、静岡に浸透した食べ物なんですね。市川さんのご実家の酒屋でも静岡おでんを作っていたんですか?

市川さん:はい、酒屋を営んでいた父がお店で提供するために、静岡おでんを作っていて、私もその味で育ちました。おやつであり、ごはんのおかずであり、20歳を過ぎてからはお酒のつまみにもなりました。

その後は進学のために上京して、卒業後は映像制作会社に入りました。27歳の時に自分で商売をやろうと思い立って、当時ブームになっていたダーツバーを開きます。ダーツマシンの卸もやっていたのですが、だんだん下火になり、なにか別の商売をやろうと決意しました。

故郷である静岡を広めたいという思いがあったので、静岡おでんを出す酒場をオープンしました。

塩見:ご実家の酒屋で作っていた静岡おでんを東京の地で出そうと思ったんですね。

市川さん:はい。父に作り方を教えてもらいました。幼い頃から食べてきた静岡おでんになるように、味付けや具材にこだわっています。

お客さんにはあらゆる面で静岡を感じてほしいので、お酒やしょうゆ、ソースなどの調味料は、ほぼ全て静岡産にこだわっています。

塩見:すごいこだわりです。故郷の味を再現した静岡を感じられるお店、それが「静岡おでんガッツ」なんですね。

こだわりが詰まった静岡おでんの作り方

塩見:では、気になる静岡おでんの作り方を教えてください!

市川さん:分かりました。まずは、牛すじをゆでてだしを取っていきます。静岡おでんを作る際に、安価な豚モツを使うケースもあるんですが、味の決め手は牛すじだと考えています。なので、妥協せずにたっぷり牛すじを使います。

塩見:静岡おでんの味の決め手は牛すじなんですね! 

市川さん:個人的には、まずおでん種に牛すじがあるかをチェックすると、いい静岡おでんに出合える可能性が高まると思います。

塩見:早速いいことを聞きました。

市川さん:あくまで静岡おでんを提供している個人的な意見ですけどね……。

牛すじを煮込んで抽出しただしに、静岡のお酒、砂糖、濃い口しょうゆを加えます。細かい分量は秘伝のレシピということで。

そこに、圧力鍋で柔らかくした大根を投入して、時間をかけて煮込みます。さらに丸一日冷まして、大根の芯までゆっくりとだしを染み込ませていきます。

塩見:大根はすごく手が込んでいますね。サイズも大きくて200円ですか! 調理工程を知るとお手頃に感じます。

市川さん:それは良かったです。大根は人気ですからね。妥協せずにこだわって作っていますので、ぜひ味わっていただきたいです。

ちなみに、静岡おでんのスープって黒い印象があるじゃないですか。ですが、実は仕込み中のだしはそんなに黒っぽくないんですよ。

塩見:え、そうなんですか?

▲左:おでん種を入れた後のだし 右:仕込み中のだし

市川さん:見比べてみてください。左はおでん種を入れた後のだしです。右は仕込み中のだしです。

塩見:全然色の濃さが違います! 仕込み中のだしもあめ色をしていますが、しょうゆのしょっぱさはなく、ほんのり甘くマイルドな味です。ただ、静岡おでん特有の深味は足りません。

おでん種を入れた後のだしは、おでん種のうま味などが加わり、非常に奥深く豊かな味わいになっています。味わいと色味がかなり異なるので、おでん種の影響が大きいんでしょうか?

市川さん:そう思います。だしの色が濃くなる調味料をそんなに使っていないので、静岡おでん特有のおでん種である黒はんぺんなどから色味が出ていることと、常に火にかけ続けることで黒っぽくなっているのかなと思います。

塩見:一般的なおでんも常に火にかけていますが、ここまでだしは黒くならないですもんね。となると黒はんぺんの影響が大きいのでしょうか?

市川さん:僕も何十年も静岡おでんを作り続けていますが、なぜこんなにもスープが黒くなるのか、解明しきれていないんです。

ただ、静岡おでんは見た目が黒いので、味付けが濃いと認識している方が多いと思うんですが、塩分濃度的には一般的なおでんや汁物料理などと、そこまで大きな差はないです。

塩見:静岡おでんのスープは黒いが、塩分濃度が高いわけではないと。そういった理由で静岡おでんを敬遠されている方には、ぜひ知ってほしい情報です。

市川さん:黒はんぺんは、イワシ、アジ、サバなどの青魚を骨や皮ごとすり身にしているため、静岡おでんのだしが黒っぽくなるのかなと思っています。なので安心して食べに来てほしいですね(笑)。

では、だしにおでん種を入れていきます。黒はんぺん、ゆで卵、練り物やウインナーなどを入れたら、弱火で煮込んでいきます。具材から出るうま味がだしに染み出てこないと、静岡おでん特有の黒いだしになりませんので、弱火でじっくり煮込んでいきます。

塩見:静岡おでんガッツ」では、昆布などでだしを取るおでんとは異なり、牛すじと静岡おでん特有のおでん種から出たうま味がメインになっているんですね。

市川さん:そうですね。東京の一般的なおでんとはだしの種類が全く異なるので、ぜひ静岡おでんを味わったことがない方には食べてほしいです。

市川さん:完成した静岡おでんをお出ししますので、ぜひ食べてみてください。

塩見:なんともおいしそうなビジュアルですね〜! 

市川さん:ありがとうございます。食べていただく前に、静岡おでんの定義や食べ方をご説明しますね。

静岡おでんは青海苔、だし粉をかけて食べるべし!

市川さん:そもそも静岡おでんとは? という質問をよくお客さんからいただきます。静岡おでん五か条をまとめているので、ご紹介します。

その壱、黒はんぺんが入っている
その弐、黒いスープ
その参、串に刺してある
その肆、青海苔、だし粉をかける
その伍、駄菓子屋にもある

静岡おでん五か条は「静岡おでんガッツ」が考えるおでんの特徴になります。

静岡おでんは、元々駄菓子屋などで親しまれていたので、箸がなくても食べられるように、全て串打ちされていました。

また、青海苔とだし粉をかけるのも静岡おでん特有のスタイルです。ぜひ青海苔とだし粉をかけてお召し上がりください。

塩見:静岡おでんには定義があったんですね。焼き鳥や串かつ同様、串で食べる料理は気軽さがいいです。青海苔とだし粉をかけるというのも、駿河湾を有し、港町を豊富に抱える静岡らしいです。

塩見:静岡おでんの定義や食べ方も分かったところで、黒はんぺん(120円)からいただきます!

黒はんぺんは、苦味とコクやうま味が強いです。骨や皮も一緒に練り込まれているということで、ザラザラした食感があります。青海苔やだし粉で風味とうま味がさらに底上げされて、これはお酒が進みますね。黒っぽいスープも、全然しょっぱくないです。

塩見:静岡に染まろうということで、緑茶割り(420円)をいただきます。もちろん静岡のお茶を使っているということで、抜かりはありません。

緑茶割りは、まろやかな口当たりと程よい苦味があり、上品な味わいです。フレッシュさもあり、口の中をスッキリさせてくれます。牛すじのうま味がきいたスープをあっさりと流してくれるので、静岡おでんにぴったりでした。

塩見:続いては、手の込んだ大根(200円)をいただきます。

見てください、この染み具合! 丸一日かけて冷ましてから、さらに長時間じっくり煮込むことで、大根の中心までだしが染み込むのだそう。

とろっと柔らかく、かむと消えてしまうような食感と、複雑なうま味を吸い込んだ味わいがたまりません。

塩見:そして、ここで市川さんに教えていただいた味変アイテムを紹介します。地域によっては静岡おでんにみそを付けて食べるところもある、ということで、おでんにかける特製みそ(60円)も注文。

なると、ちくわ、さつま揚げが1串で味わえる三色(120円)に、おでんにかける特製みそを付けていただきます。

おでんにかける特製みそは、優しい味わいでみその主張は強くありません。あくまでおでん種とだしの味わいを邪魔せずに、ほんのりとアクセントを付けてくれます。

三色はそれぞれに食感と味わいが異なるため、お得感満載でした。

塩見:最後に牛すじ(300円)をいただきます。大きめにカットされた牛すじがたっぷり串に刺さっていて、お店の心意気を感じます。

静岡おでんのだしのポイントになるという牛すじですが、おでん種としても一級品。柔らかく煮込まれており、適度なお肉感がありながらもほどけて溶けていきます。

肉のうま味やコクがしっかりと感じられ、良質な牛すじがふんだんに使われていることが分かります。「静岡おでんガッツ」に来た際は、ぜひ味わっていただきたい一品です。

黒はんぺんが味の決め手ながら、東京で入手するのは大変

静岡おでんガッツ」に、静岡おでんのこだわりや作り方などを教えていただきました。

今回紹介したおでん種以外も、豊富に用意されていますので、ぜひ気になった方は本場の静岡おでんを食べに行ってみてください。

静岡おでん五か条によれば、黒はんぺんが入っていることが条件になっていますが、都内のスーパーではめったに見かけないとのこと。

近所のスーパーなどで黒はんぺんを見つけたら、牛すじでだしを取って、静岡おでん作りに挑戦してみてもいいかもしれませんね。

それでは。

お店情報

静岡おでんガッツ

住所:東京新宿高田馬場2-19-8 阿部ビル1F
電話番号:03-6273-8663
営業時間:【月~木】17:00~23:00【金・祝前日】17:00~24:00【土】16:00~24:00【日・祝】16:00~22:00
※閉店1時間前にフードのラストオーダー/30分前にドリンクのラストオーダー

定休日:なし

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書いた人:塩見なゆ

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酒場案内人(飲食・酒類専門ライター)。東京都杉並区・荻窪生まれ。 得意分野は街と酒。 新宿ゴールデン街に通ったお酒好きの両親を持つ。両親が飲んでいた瓶ビールに憧れて成長する。趣味からはじまった酒場めぐりは、次第に仕事になっていく。

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