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東京都の新型ウイルス「感染経路不明者」の実態。感染者の爆発的な増加を止めるためにできること - Business Insider Japan

3月25日、東京都は緊急会見を開催。小池百合子都知事が「感染者の爆発的な増加(オーバーシュート)の重大局面にある」と、今週末の外出自粛を要請した。

1週間前の3月19日には、新型コロナウイルス対策専門家会議が開催され、今後の対策について提言したばかり。

東京における感染者の拡大状況、日本の対策の行方について、専門家会議に名を連ねる川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長に話を聞いた(取材は3月23日に行った)。

岡部信彦所長

多忙な時間の合間を縫って取材に応じてくれた岡部信彦所長。3連休には、感染が広がりやすいとされる3つの条件を避けて、桜を見に行っていたという。

撮影:三ツ村崇志

「対策の成功」が独り歩きしてしまった危機感

「専門家会議は、これまで『見解』という形で意見を述べていました。それが、今回は『提言』となりました。これは、具体的に政府に対して意見を伝えたかったというところです」(岡部所長)

北海道では、2月中旬から下旬にかけて感染者が急増したことから、知事によって緊急事態宣言が出された。政府からも同時期に、「1〜2週間が瀬戸際」という表現で対策の強化が訴えられていた。

19日の専門会議では、緊急事態宣言に伴う北海道の一連の対応によって、感染者の爆発的な増加を防ぐことができたとしている。また、北海道を除く地域で実施されたイベント自粛をはじめとした複数の対策も、総合的に見るとある程度効果的だったと判断された。

日本の感染者

3月19日に開催された専門家会議では、日本全体で見たときに、一人の患者がウイルスを感染させる人数の割合(実効再生算数)が少し減少しているとされた。ただし、都市部での感染拡大について懸念が指摘されていた。

出典:新型コロナウイルス感染症対策専門家会議

ただし岡部所長は、

「政府の“瀬戸際”という表現が『その期間を乗り越えればなんとかなる』という誤った印象で伝わってしまっていたのかもしれません。実際は、(現在も)ずっとぎりぎりの状態で持ちこたえているというところでしょう」

と、3月20日から22日の3連休で緩み過ぎたように見えた都内の空気感について、危機感を示していた。

脇田先生

専門家会議座長、国立感染症研究所所長の脇田隆字氏。

撮影:三ツ村崇志

今後の対策の方針について、3月19日の専門家会議の会見では、これまでの対策を継続していくことが発表された。しかし、岡部所長によると、当初、専門家会議では2つの方針が議論されていたという。

1つは、 対策を強化することを視点に置きながらも、今までと同じように医療機関のパンクを防ぎながら対応する方針もう1つは、2月末からの一連の対策の効果を踏まえて、さらに強い対応を取り、徹底的に新型コロナウイルスを抑え込もうという方針だ。

「少なくとも、現状から対応をぐっと緩めるという考えは私たちにはありませんでした」(岡部所長)

今、危険度が高いのは都市部

小池さん

3月25日の緊急会見で、オーバーシュートの重大局面にあると注意喚起する小池百合子都知事。

撮影:三ツ村崇志

3月19日の専門家会議では、東京や大阪といった都心部で感染者とのリンクを追えない(感染源の分からない)患者の割合が増えてきたことが指摘されている。

「かなりハラハラしている状況です。感染源が分からない感染者は、本来、濃厚接触者を調べた先にいるはずです。それが調べ切れなくなりつつあります。

今は、濃厚接触者を早急に見つけ出すことが求められるのですが、それにはものすごい労力がかかります。まだ諦めるには早いので、専門家会議の提言では対応するための人や費用を求めました」(岡部所長、本発言は23日夜)

日本は、新型コロナウイルスへの対応の基本方針として、クラスター(感染者集団)の早期発見などを掲げている。

感染者を調査するペースに対して、感染者の発生ペースが早くなってしまうと、クラスターを早期に発見できなくなり、気づかないうちに感染者が爆発的に増えてしまいかねない。

東京都の感染源不明の感染者は100人以上?

感染者数資料

東京都が3月25日の緊急会見で配布した資料には、これまでに確認された感染者どうしのリンク情報(感染が確認された日付段階の情報)が記載されていた。濃厚接触者の有無については、空欄が目立つ。

撮影:三ツ村崇志

では、問題となる感染源が分からない感染者はどの程度いるのか。

3月25日の東京都の緊急会見では、新たに発生した41人の感染者のうち、13人の感染者の感染源が特定できていないと発表された。

3月25日20時の段階で、東京都に確認されている感染者は全部で212人(3月26日にはさらに47人増えた)。25日の都の緊急会見で配布された資料によると、それぞれの感染者が確認された時点で、感染者と濃厚接触があったなどという感染の経緯を追えているは75人に過ぎなかった。

つまり、残り137人の感染者は、感染が確認された時点で、どこから感染したのか分かっていなかったということになる。

東京都福祉保健局 健康安全部感染症対策課の担当者は、

「感染が確認された時には感染源が分かっていない場合でも、その後、保健所の調査で感染経路が確認されている例もあります」

と話すが、「現段階で、どの程度感染経路の把握が進んだのか?」というBusiness Insider Japanからの質問に対して具体的な回答はなかった(個人情報の保護などが理由)。

なお、一時期感染者が増えていた愛知県では、3月26日の段階で報告されていた感染者157人中、感染の経緯が分かっているのは137人。感染者の急増が懸念されていた北海道でも、感染者168人中、少なくとも93人は感染の経緯が把握できていた(3月26日段階の各自治体の資料を参照)。

感染者が多いとされている他の都道府県と比べても、やはり東京都内では感染の実態を掴みきれていないという印象は否めない。都内の感染状況・危機意識を正確に判断するためにも、感染経路に関する情報の透明性が求められる。

感染源の分からない患者が、すでに判明している感染者から感染していたのなら不安は多少軽減できる。しかし、もしそれぞれバラバラの感染源から感染していた場合は、その背後に、さらに多くの感染者がいる可能性が否定できなくなる。

ロックダウンを防ぐためにできる数少ない取り組み

買い占め

3月25日以降、東京ではロックダウンの懸念から、一部では食品の買い占めなどが起きている。現状では生産も物流も止まっていない。通常通りの購買行動をとればよいだけだ。

撮影:三ツ村崇志

今後、感染源の特定できない感染者が増え続ければ、都心部で爆発的な感染者の増加「オーバーシュート」が発生し、ロックダウンといった強い措置を取らざるを得なくなる。

「感染症を抑え込むことを科学的に考えるなら、『1カ月間、すべての人は自宅待機』などとするのが一番簡単な対策です。1カ月経てば、検査方法もアップデートされる。治療薬の臨床試験も進み、事情はずいぶん変わるでしょう」(岡部所長)

ただし、多くの人を1カ月家に閉じこめるという戦略をどこまで実施できるのかは未知数だ。ロックダウンを実施すると、経済的に大きく疲弊してしまうことも課題であり、さらに人の心理・精神状態にも問題が出てくる可能性が高い。

だからこそ日本はこれまで、なんとかロックダウンにならないようにこらえ、しのぐ戦略をとってきた。

密

この3つの条件が重なるような場所では、新型コロナウイルスの感染が拡大しやすいと考えられている。こうした場所は避けるよう、自分の行動を見直してほしい。

出典:東京都

専門家会議は、感染の拡大を防ぐために、3つの条件「換気の悪い密閉空間」「多数が集まる密集場所」「間近で発話や発声をする密接場面」が重なっている状況を避けるよう行動することが重要だと、何度も強調してきた。

当然、少なくとも何らかの症状がある人は、3つの条件が重なっていない場所であっても、外出や人との接触を控えるべきだろう。

これらは、今後感染の拡大を抑えるために、私たち一人ひとりができる数少ない対策であり、最も重要な取り組みでもある。

オーバーシュートが発生すると若者からの重症者も

渋谷

3月26日の渋谷スクランブル交差点。相変わらず人はそれなりに多い。

撮影:三田理紗子

基本的に、新型コロナウイルスに感染しても、8割の患者は軽症で済む

これは、このウイルスと戦う上で大きなアドバンテージである一方、症状がなかったり軽かったりする人の間で、気が付かないうちに感染が広がる可能性も考えられるという意味で、やっかいな性質でもある。

とりわけ若い世代は高齢者に比べて活動範囲が広いため、軽症・無症状のうちに知らぬ間に感染を広げる役割を担ってしまいがちだ。専門家会議から若者に対して「お願い」という形で、感染が広がりやすい3つの条件が重なる場を避けるよう注意喚起されているのはそのためだ。

また、若者は軽症で済むことが多いといっても、もしオーバーシュートが生じれば、感染者の増加に応じて、若者の重症例や死亡例も必ず増えてしまうことが想定される。

「若者自体のリスクは低い。ただし、低いだけであってリスクがないわけではない」(岡部所長)

実際、海外では、すでに20代の患者が死亡する事例が報告されている。また日本でも、2月には北海道で感染が確認された20代の女性が、一時的に人工呼吸器を使う重篤な状態に陥っていた例も確認されている(女性はその後回復)。

感染者数

東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトには、日々の検査数や感染者数などが細かく記録されている。グラフは、延べ感染者数。

撮影:三ツ村崇志

本記事執筆中の26日夜には、東京都で新たに47人の感染者が確認された。これで、東京都で確認された感染者の数は全部で259人となった。

この週末は、東京都をはじめとした関東圏ほぼ全域で外出の自粛が要請されることとなった。

この先、感染者が爆発的に増加してロックダウンという対策を実行することになってしまえば、その影響は計り知れない。今は、一人ひとりの行動を少し変えるだけで、もしかしたらそれを避けられるかもしれないぎりぎりの状況だといえる。

(文・三ツ村崇志)

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March 27, 2020 at 09:02AM
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