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Z会 社内の「共通言語」を作る昇格試験の課題図書4冊 - 日本経済新聞

通信教育事業を中核に参考書・問題集の出版や塾経営などさまざまな教育サービスを提供するZ会グループ。Z会では、昇格試験のために階層別の課題図書を設定しているといいます。どのような本を選び、どのように試験を行っているのでしょうか。同社総務人事部の穴澤英美子さん、中島貴之さん、小林千晶さんに聞きました。前編の今回は、昇格試験の仕組みと一般社員階層の課題図書について。

1回目の昇格試験の課題図書は?

日経BOOKプラス編集部(以下、──) Z会には受験勉強でお世話になった人も多いと思います。現在の事業内容を教えてください。

総務人事部人材開発課 採用・教育担当 小林千晶さん(以下、小林) 1931年に通信教育事業からスタートしました。現在は幼児から社会人までを対象に、出版や塾経営と事業を多角化していますが、やはり中核は通信教育となります。

小林千晶さん

小林千晶さん

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小林千晶(こばやし・ちあき)

Z会 総務人事部 人材開発課 採用・教育担当
2020年に新卒でZ会へ入社し、人事へ配属。配属とともに採用業務に従事し、現在は新卒採用のリーダーとして企画・運営を担当。その他、パートタイム社員採用、内定者研修・新人研修、業務表彰・永年勤続表彰などの社内表彰制度の企画・運用を担当。

社内では、課題図書を設定した昇格試験があるそうですね。

総務人事部人材開発課 採用・教育担当 中島貴之さん(以下、中島) はい、課題図書は全部で7冊あります。昇格試験には、大きく分けて、一般社員の中でレベルを上げるための昇格試験と、一般社員から役職者に上がるための役職任用資格試験の2種類があります。昇格試験は年に一度行われ、時期は階層によって異なりますが、だいたい毎年5~6月に日程を公示して受験者を募ります。8月くらいから筆記試験が始まり、10~12月ごろに面接やプレゼンなどが行われます。

総務人事部人材開発課課長 穴澤英美子さん(以下、穴澤) 昇格試験は、問題作成や面接運営などにおいて、人事以外も含めたかなりのマンパワーを割いています。

中島貴之さん

中島貴之さん

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中島貴之(なかじま・たかゆき)

Z会 総務人事部 人材開発課 採用・教育担当
2014年に新卒でZ会へ入社。大学受験生向けの世界史の通信教育教材や書籍の制作業務を経て、2018年に人事へ異動。人事としては新卒採用・中途採用といった採用領域と、昇格試験関連の運営に加え、若手・役職者向けの社内研修といった教育領域、従業員意識調査などの社内サーベイを主に担当。

「受験者を募る」ということは、受けたくない人は受けなくてもいいのですか。

中島 そうです。とはいっても、一般社員内の昇格試験は、受験資格のある人は受ける人のほうが多いですね。

穴澤 レベルが上がって役職任用資格試験になると、中には「まだ部下を持つ立場になる自信がない」などの理由で、自らの意思で受けない人もいます。ただ、試験はいつ受けてもいいですし、何度受けてもかまいません。本人の自由です。

穴澤英美子さん

穴澤英美子さん

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穴澤英美子(あなざわ・えみこ)

Z会 総務人事部 人材開発課 課長
1998年に新卒でZ会へ入社。通信教育の広告宣伝、マーケティング、企画調整、商品政策、企業向け営業などの業務を経て、2016年に人事へ異動。人事制度の運用・改定、採用・教育、昇格試験、キャリア支援、労務・安全衛生など、人材関係の業務全般を主管。

どのような課題図書を設定しているのか、教えてください。

中島 まず一般社員内の昇格試験では、以下の4冊が課題図書となっています。

『ビジュアル改訂版 「経営戦略」の基本がイチから身につく本』(手塚貞治著/すばる舎)

『会計の基本 この1冊ですべてわかる』(岩谷誠治著/日本実業出版社)

『これだけは知っておきたい「マーケティング」の基本と常識 改訂版』(大山秀一著/フォレスト出版)

『【新版】経営分析の基本がハッキリわかる本 キャッシュフロー時代の計数感覚の磨き方・活かし方』(千賀秀信著/ダイヤモンド社)

 一般社員は3階層に分かれており、2段階の昇格試験があります。いずれの試験でも戦略と会計とマーケティングの基礎知識、いわば社内の「共通言語」を身に付けるために課題図書があります。2段階のうち1回目の試験は、『ビジュアル改訂版 「経営戦略」の基本がイチから身につく本』『会計の基本』『これだけは知っておきたい「マーケティング」の基本と常識 改訂版』から本に書かれている内容を中心に出題されるという、オーソドックスな試験になります。

なぜ、これらの本を選ばれたのでしょうか。

中島 『 ビジュアル改訂版 「経営戦略」の基本がイチから身につく本 』は内容が普遍的で、新入社員が抵抗感なく読める内容だからです。

『ビジュアル改訂版 「経営戦略」の基本がイチから身につく本』(手塚貞治著)

『ビジュアル改訂版 「経営戦略」の基本がイチから身につく本』(手塚貞治著)

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 『 会計の基本 』については、以前は別の本を使っていたのですが、品切れになってしまいまして……会計関連の書籍を複数取り寄せ、財務経理の責任者からのアドバイスも踏まえて差し替えました。『 これだけは知っておきたい「マーケティング」の基本と常識 改訂版 』を選んだのも基本的な内容が網羅されているためです。

『会計の基本 この1冊ですべてわかる』(岩谷誠治著)

『会計の基本 この1冊ですべてわかる』(岩谷誠治著)

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『これだけは知っておきたい「マーケティング」の基本と常識 改訂版』(大山秀一著)

『これだけは知っておきたい「マーケティング」の基本と常識 改訂版』(大山秀一著)

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穴澤 一般社員内の昇格試験の課題図書は、社会人として戦略や会計、マーケティングの知識を身に付けるためのものが選ばれています。一般的な知識が身に付いていることが確認できればよいので、簿記3級を取得している人は、1回目の会計の試験は免除とする対応もしています。

中島 そして、一般社員内の2回目の昇格試験では、『 【新版】経営分析の基本がハッキリわかる本 』が追加されます。

『【新版】経営分析の基本がハッキリわかる本 キャッシュフロー時代の計数感覚の磨き方・活かし方』(千賀秀信著)

『【新版】経営分析の基本がハッキリわかる本 キャッシュフロー時代の計数感覚の磨き方・活かし方』(千賀秀信著)

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「知識を自社に落とし込む力」が問われる

そうすると、1回目の昇格試験は、社会人としての基礎を固めるような位置づけですね。

中島 そうですね。会計の基礎知識や戦略の立て方などを学びます。一般的に経営ではどういうロジックやフレームワークで何を考えるのか。そして、マーケティングはZ会のどの部署にいても必要となりますので、マーケティングの基礎知識もしっかり身に付けます。

 ただ、一般社員内での2回目の試験では、知識に加えて「より自社の業務に落とし込む」ことが求められます。自社の財務諸表をどう読むか、マーケティングや経営戦略の知識から、自社に合ったどんな戦略が立てられるかが問われます。例えば、1回目の試験では「マーケティングの4P」という言葉の意味を答えれば及第だったところ、2回目の試験では「Z会に当てはめると、どのようなマーケティング戦略が立てられるか」を答えなくてはいけません。学んだ知識を思考の軸や後ろ盾にできているかを見る試験となります。

 さらに、役職任用資格を得る試験を受験する段階では、より経営に近づいていくので、経営層の考えを理解する必要があります。そのため、新たなタイプの課題図書が増えます。そちらについては次回お話しします。

穴澤 各階層に合わせた課題図書を用意するのは、Z会の商品サービスが幅広い業態、対象顧客にわたり、いわばみんなが違う仕事をしている中で、「共通言語」を持つためです。試験には、筆記試験、論文、面接、プレゼンなどさまざまなタイプがあるのですが、課題図書が最も影響するのは筆記試験で、いずれの階層でも初期段階で行います。筆記試験でまず「共通言語」に出合い、他の種類の試験に向き合いながら深め、日頃の業務の中で反芻(はんすう)しながら、本当の意味で「共通言語」を身に付けていくというイメージです。

小林 昇格試験を機に課題図書を読んだことで、その後の朝礼での社長や経営陣の話が、より解像度高く理解できるようになったことを覚えています。会社の方針が腹落ちすると、会社内での自分の仕事の位置づけが理解できるだけでなく、自分の仕事がお客様の喜びにどのようにつながっているのかを理解できるのだなと実感しました。働く喜びを得るうえで、必要不可欠な経験ができたのではないかと思います。

(後編に続く)

「各階層に合わせた課題図書を用意するのは、みんなが違う仕事をしている中で『共通言語』を持つため」

「各階層に合わせた課題図書を用意するのは、みんなが違う仕事をしている中で『共通言語』を持つため」

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文/三浦香代子 写真/廣瀬貴礼

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