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「『男のくせに』は気にしない」36歳サラリーマンが化粧に凝るワケ - livedoor

都内で広報職として働く会社員の鎌塚亮さん(36)は、YouTubeのメイク動画をきっかけに、化粧水や乳液などのスキンケアやアイシャドウに凝り始めた。鎌塚さんは、「メイクは自分のご機嫌を保つための手段のひとつ。妻にはどんどんやれと言われる」という。ライターの土居雅美氏が聞いた――。
撮影=甲斐博和
鎌塚さん - 撮影=甲斐博和

■男性向けコスメ市場が盛り上がりを見せている

ここ数年、男性向けコスメの市場が活気づいている。2019年に、資生堂の男性向けブランドuno(ウーノ)が肌の色ムラやキメを整えるBBクリーム「フェイスカラークリエイター」を発売したところ、9カ月で出荷数が38万個を超える大ヒットとなった。大手百貨店の伊勢丹新宿店メンズ館ではメンズメイク専門コーナーが設けられ、専門コンシェルジュがオススメの商品を教えてくれる。

女性向けの国内ブランド「THREE(スリー)」も男性向けに「FIVEISM×THREE(ファイブイズム バイ スリー)」というシリーズを展開し、スキンケア用品やベースメイク用品、ポイントメイク用品などを販売している。

都内で働く会社員、鎌塚亮さん(36)もメイクに精を出す男性の一人だ。爽やかな笑顔が印象的な鎌塚さんは、一見メイクしているようには見えないが、よく見るとまぶたに肌なじみのいいオレンジ色が乗っている。

鎌塚さんがメンズメイクを始めたのは、コロナ禍で外出自粛をしているときだったという。通っていたボクシングジムにも行けずに時間を持て余し、家でYouTubeを観ていたら、りゅうちぇるさんのメンズメイク動画を見つけたのがきっかけだ。

■31歳のときお酒を飲み過ぎ、自分の加齢を痛感した

「なんとなく流行っているな、と思い『メンズメイク』で検索して出てきたのがりゅうちぇるさんの動画でした。メイクの上手さや話の上手さがずば抜けていたし、何より楽しそうだったので、自分でもやってみたくなったんです」

そう言いながら、鎌塚さんは化粧ポーチとして使っている透明なペンケースを取り出した。化粧水に唇の保湿クリーム、毛穴を隠すための透明な化粧下地、皮脂を抑えるパウダー。男性用もあれば、男女兼用もある。アイブロウは女性向けのものを愛用している。一つ一つのアイテムを楽しそうに解説する鎌塚さんだが、「もともとコスメ好きだったわけではないんです」と断りを入れる。

撮影=甲斐博和
鎌塚さんのコスメ。平日はマットな質感の化粧下地を、休日はツヤ感のあるものを使い分けている。 - 撮影=甲斐博和

「31歳のときにお酒を飲み過ぎて病院に運ばれ、『もう20代じゃないんだな』と己の加齢を痛感しました。それ以来、心身ともに良いコンディションを保つため、自分を意識的にケアすることを心がけました。例えば、タバコをやめてお酒を減らしたり、ボクシングジムに通ってみたり。そうしたら、明らかに体調がいいんですよね。それ以来、自分をご機嫌に保つための行動を『セルフケア』と呼び、靴を磨いたり花を飾ったりすることを楽しむようになりました。メイクも『セルフケア』の一環です」

■メイク専門店に行ったのに何も買わずに帰ってきた

鎌塚さんが初めて買った商品は、ピンク色のパッケージの日焼け止めだ。パール成分も配合されており、日焼け止め効果だけでなく、肌を明るくする効果もある。

「仕事で外回りも多いので使い始めたのですが、肌の色が明らかにトーンアップして。『あ、俺の肌ってくすんでたんだ』とそこで初めて気づいたんです」

日焼け止めを皮切りに、スキンケア用品や化粧下地、アイシャドウと月5千円程かけて少しずつ揃えていった。いまでは、平日と休日でメイクのニュアンスを変えるほどにハマっているという。

そんな鎌塚さんだが、最初はメイク専門店に入れなかったそうだ。勇気を出して初めて原宿のメイク専門店に足を踏み入れた日も、店内には完璧に化粧した女性か、韓国アイドルのような化粧慣れした若い男性しかおらず、仕事帰りの恰好をしていた鎌塚さんは気おくれして何も買えなかった。

「男性向けコスメのコーナーが設けられているのだから、何も恥ずかしいことなんてなかったはずなんです。でも、手を伸ばすことを自意識が邪魔してしまいました」

■メンズメイクには潜在的需要がある

初めの頃は気恥ずかしさが拭えなかったが、今では「メイクしていることを気づかれてもいいと思っています」と話す。

「そもそもあまり気づかれなかったのですが、気づいた人は好意的に受け入れてくれました。女性はメイクについて教えてくれるし、いらなくなった化粧品もおすそ分けしてくれました。妻に至っては『夫がきれいになるのは嬉しいし、化粧品の話もできて楽しいからどんどんやれ』と言ってくれましたね」

その一方で、男性からは反応が薄かったという。

「僕が執筆しているnoteや美容誌のウェブ連載を通じて、メイクをしていることを知られても、男性に興味を持たれることは比較的少なかったです。彼らのメイクに対するスタンスは、『化粧水だけはつけている』『妻に言われて日焼け止めはつけているけど、ベタベタするんだよね』と戸惑い混じり。関心がないか、スキンケアをしている人も、強い抵抗感はないが、半ば義務のように感じているようです」

男性向けのメイク動画はまだ少なく、周りに訊ねるのも抵抗がある。興味はあるがやり方がわからない、という男性も多い。

「女性からすると意外かもしれませんが、男性同士でもネクタイやシャツなどのファッションチェックは結構するんです。毎日スーツで変わり映えがないので、そのぶん日によって変わる部分はしっかり見てしまうんですよね。身なりを気にする文化は確かにあるので、メンズメイクに潜在的な需要はあるのだと思います」(鎌塚さん)

■「ダサピンク現象」ならぬ「ダサグレー現象」とは

そんな鎌塚さんだが、一つ気になることがあるという。それが“ダサグレー現象”だ。“ダサピンク(ダサいピンク)現象”という、「女性ならばピンク色の物が好きだろう」という安易なマーケティングによってピンク色の女性向け商品が多数存在している現象がある。その男性版を鎌塚さんは“ダサグレー現象”と呼んでいる。

「男性向けの化粧品売り場に行くと、全体的にモノクロなんです。商品が黒、グレー、青しかない。多様性が無いんですよね。仕事につけていけるような、機能性を謳った化粧品しかありません。それは『男なら仕事第一でしかるべき』という価値観の影響なのでしょう。でも、僕は24時間仕事をしているわけじゃない。休日に出かける時には化粧をばっちりきめた妻の隣に並んで恥ずかしくないメイクをしたいし、家にいるときはリラックスできるようなスキンケアがしたいんです。自分をご機嫌に保つためにメイクをしているのに、アイテムのデザインが機能性重視だとまるで仕事のようで息が詰まります」

■誰でも、“メイクするもしないも自由”になればいい

鎌塚さんはメイクをきっかけに、「女性は公共の場でメイクをしなければならない」という同調圧力についても考えるようになったそうだ。

撮影=甲斐博和
鎌塚さんのリップとバーム - 撮影=甲斐博和

「女性はメイクして当たり前、男性はメイクをしないことが当たり前、と現状では性別によって真逆のことを求められていることに気づきました。でも、女性向け美容書などを中心に、“メイクしなくてもいい”という価値観はたしかに広まっているのではないでしょうか。反対に、男性は僕のように“メイクしてもいいじゃん”と思う人が増えている。双方が社会の規範を更新しているという点では、同じところに向かっているような気がします」

最終的には誰でも、“メイクするもしないも自由”になればいいんですけどね、と鎌塚さんははにかみながら微笑んだ。

知り合いに「メイクをしているんだ」と言うと、「女装するの?」と聞かれたこともあるが、それは全くの誤解だ。

「僕にとってメイクはセルフケアの一環なんです。自分のために時間を使うこと。靴磨きや散歩、お茶を飲むことなんかと一緒です。思えば靴を磨いてきれいにすることはメイクに似ているし、趣味の文房具収集も化粧品を集めることと似ています。生きるのって苦しいじゃないですか。ラクになりたいし、楽しいからやっています」

ただのメイク好きな30代サラリーマンかと思いきや、その動機を聞いてジェンダーや多様性、セルフケアにまで思いをはせることになった。「固定観念からの解放」について考えるきっかけとなったメンズメイクは奥の深い世界なのかもしれない。

(ライター 土居 雅美)

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"化粧" - Google ニュース
October 31, 2020 at 09:15AM
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