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2026年に100万台? トヨタが作る売れ筋のEVとは? - EVsmartブログ

アメリカでバッテリーと車を一貫生産

日経新聞によれば、トヨタは2025年に、米ケンタッキー州の生産設備を改修し、ガソリン車とともにEVを生産できるようにします。まずはSUVタイプのEVを、2025年中に月産1万台にし、2026年以降は年産20万台規模に引き上げます。これにより、アメリカで生産する車の2割近くがEVになると、日経は報じています。

車の生産設備とともに、ノースカロライナ州でバッテリー生産も開始します。また、EVの生産に必要な部品を現地調達し、アメリカで完成車の組み立てに必要なサプライチェーンを構築します。

ノースカロライナのバッテリー工場(プレスリリースより引用)。

このほか、インドなどでもEVの生産を開始し、2026年には世界で年間100万台のEVを生産することを目指すとしています。

この報道についてトヨタの広報は、次のようにコメントしています。

「ケンタッキー工場が2021年に発表した4.6億ドルの投資により、将来的にはSUVやBEVを生産するための柔軟性が高まりますが、現時点では何も決まっていません」

報道の内容を否定しているわけではないので、計画の大枠は間違っていないと思われます。

ケンタッキー工場の当初計画ではFCEVが中心

では、今回の報道の内容を過去の発表や、EVsmartブログの関連記事をもとに確認してみたいと思います。

【関連記事】
トヨタがEV用バッテリーに7500億円を追加投資~北米のEVシフトに間に合うのか?(2022年9月5日)

まずケンタッキー州の工場(トヨタ・ケンタッキー:TMMK)は、約9000人を要する北米トヨタの基幹工場であるだけでなく、JETROの短信によれば総床面積は世界最大です。現在は、カムリやカムリ・ハイブリッド、RAV4ハイブリッドなどを生産しています。

TMMKは2021年10月29日に投資計画を発表し、4億6100万ドルを投じて施設の強化をはかり、電動化を含む新たな製品を生産する能力を確保するとしていました。

とはいえこの時の発表では、2.4リッターのターボエンジンの生産ライン新設や、約1400人を直接雇用することがポイントでした。このほか、『レクサスES』と『レクサスESハイブリッド』を日本の工場に移管し、TMMKでは「次のモデルチェンジ」に備えるとしていました。基本的にはICE車の生産設備増強を図っていたと考えられます。

一方で電動化に関してTMMKは、2023年から専用ラインで大型商用トラックに搭載する燃料電池モジュールの生産を開始する計画を2021年8月に発表しています。

当時の発表では、燃料電池を既存のプラットフォームに組み込むことで「トヨタの電動化戦略がより明確になる」と強調しているので、TMMKにとっての電動化はEVではなく水素をエネルギーにする燃料電池自動車(FCEV)を意味していたと言えます。

大規模なEV生産ライン追加の可能性

けれども今後は、一転してEVに生産を傾斜させる可能性があります。もともとTMMKでは、新モデルの生産のためにレクサスの生産を日本に移管して場所を確保しているので、ここにEVを入れ込むのかもしれません。

TMMKの生産量は、2021年11月8日付けのJETROビジネス短信によれば、車両が年間55万台、エンジンは年間60万台です。

日経の報道では、2025年中に年間12万台、2026年以降は年間20万台をEVにすることになるので、現在の生産量で考えると4割程度がEVに振り向けられることになります。その分、ICE車が減るわけで、かなり大規模な生産計画の変更になると考えられます。

カリフォルニア州を筆頭に、ICE車の規制が厳しくなるのがはっきりしているので対応は当然のこととはいえ、巨人トヨタが動くのであれば今後のEV市場にプラスになるのは間違いありません。でも日経報道の内容が事実なら、水素を一所懸命に宣伝しているのと同じくらいEVの生産拡大を強調してもいいと思うのですが、どうでしょうか。

そう思っていたら、日経報道の2日後の2月23日にトヨタは、液体水素を積んでレースに参戦予定の『GRカローラ』のテストを大々的にアピールしていました。トヨタ社内にいろいろな思惑があるのは間違いなさそうです。

2026年までに100万台は既発表の内容を踏襲

プレスリリースより引用。

次に、日経報道にあった2026年までに100万台という目標を考えてみます。目標の生産台数を達成するための最大のポイントは、言うまでもなくバッテリーの確保です。

バッテリーについては、トヨタは2022年8月31日に、アメリカに約25億ドル、日本で約4000億円を追加で投じてすでに発表していた生産設備計画を増強しています。

25億ドルを追加投入するのは、トヨタの北米事業体「Toyota Motor North America(TMNA)」が豊田通商と2021年11月に設立した合弁のバッテリー生産会社、「Toyota Battery Manufacturing, North Carolina(TBMNC)」です。TBMNCは2021年に34億ドルでバッテリー工場を新設することが決まっていましたが、2022年8月に投資額が上乗せされました。

工場を建設するのは、会社の名前のとおりノースカロライナ州です。

2021年発表時の当初計画によれば、稼働開始は2025年で、稼働時には4本の生産ラインで80万台分のリチウムイオンバッテリーを生産します。その後、生産ラインは6本に増強する予定です。これで生産可能台数は120万台になります。

ここで日経報道を見てみると、2026年に世界で100万台まで生産を増やすとしているので、2025年に年80万台分、その後に120万台分にまで増強するというTBMNCの現行計画と大きな違いはありません。

ということで、バッテリーに関しては、日経報道には新しい内容は含まれてないことがわかります。

主流は小型EVかもしれない?

さて、今から3年後に100万台売れるのは、どんなEVなのでしょうか。トヨタはこれまでの発表で、アメリカでのバッテリーの生産容量は2024年から2026年の間に最大40GWhを確保することを目標にするとしています。

この他、日本ではトヨタとパナソニックホールディングスとの合弁会社「プライムプラネットエナジー&ソリューションズ」(PPES)の姫路工場の生産ライン増強をして、2024年に年間7GWhを確保する計画を公表しています。

ところで、以前のEVsmartブログの記事では、ノースカロライナ州の工場で生産する計画のバッテリー容量を、『bZ4X』のバッテリー容量、71.4kWhで計算すると約56万台分になると推察しました。

これだと計画の80万~100万台にまったく届きません。でも2026年に100万台というのは世界生産なので、トヨタが提携しているCATLから大量のバッテリーが入ってくるのであれば問題ありません。

もうひとつの可能性は、1台当たりのバッテリー容量がもっと少ない車が増えることです。

kWhあたりの価格が下がったとはいえ、大量のバッテリーを載せれば車両価格は高くなります。問題は、それでは購入できる層が制限されてしまうことです。さらに言えば、普段は使わないバッテリーを積載して走るのは環境負荷も高まります。

回避策は、バッテリーの搭載量を減らして車の価格を下げることです。ということで、現行のアメリカでの年間生産計画にある容量40GWhで100万台の車を作るとすると、1台当たり40kWhということになります。バッテリーの容量に関してトヨタは、2030年までに280GWhを生産する目標を掲げています。バッテリー搭載量を減らすことができれば、台数は増えていきます。

航続距離の短い車が売れるかどうかは、わかりません。それでも地域によって違いがあるのは間違いありません。だって日産『サクラ』は日本で売れているのですから。『サクラ』と同じ20kWhの搭載量なら、ノースカロライナの工場だけで80万台分になります。

そこまで極端にならないとしても、メインストリームのEVがまだ出ていないという見方はできそうです。

調査会社Auto Forecast Solutions LLC.のグローバル車両予測担当副社長、Sam Fiorani氏は、オンラインメディアのデトロイトビューローに「すでにEV市場に参入しているメーカーは、EV市場の深さをまだよく分かっていない」と、EV市場の現状をコメントしています。そしてこう話しています。

「彼ら(筆者注:先行して販売している各社)はアーリーアダプター以上の消費者に受け入れられるかどうかを測っているに過ぎないのです。まだメインストリームのEVはあまり出ていないのです」

売れ筋と収益性は別だと思いますし、これから出てくるEVが売れるかどうかも定かではありませんが、少なくともICE車の売れ筋の価格帯に収まるEVがまだ出てきていないのは確かです。ここをどのメーカーが抑えるのか。ハードルは極めて高いものの、トヨタにチャンスがないわけではないということでしょう。

お楽しみはこれからです。

文/木野 龍逸

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