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【探訪・石川県能美市①】九谷焼を「知る」「見る」「作る」「買う」 九谷焼にまつわる様々な体験ができる「九谷陶芸村」 - 読売新聞社

石川県の南部に位置する能美のみ市は、日本海や河川、里山などに囲まれた自然豊かな地であるとともに、九谷焼の産地です。九谷焼は、能美市をはじめ金沢市や加賀市、小松市で生産される伝統工芸。能美市がほこる九谷焼について、あらゆる角度から楽しめるのが「九谷陶芸村」です。九谷焼の名品を鑑賞できる「KAM能美市九谷焼美術館」(※)や九谷焼を購入できる専門店などが並び、九谷焼にまつわるさまざまな体験ができます。KAM能美市九谷焼美術館|五彩館|・|浅蔵五十吉記念館|施設長の最上進さんに、九谷陶芸村の見どころを教えてもらいました。

※KAMはThe Kutani porcelain Art Museumの頭文字

名品とともに九谷焼の歴史をたどる「五彩館」

KAM能美市九谷焼美術館「五彩館」

能美市九谷焼美術館は、4つの施設で構成されています。

  • |五彩館|
  • |浅蔵五十吉記念館|
  • |体験館|
  • |職人工房|

九谷焼の基本を知りたい方は、まずは五彩館へ行ってみましょう。九谷焼の名品を鑑賞しながら、九谷焼の歴史や制作過程、代表的な作風を学べます。 “五彩”館という名のとおり、「紺青の間」「朱赤の間」「紫の間」「緑の間」「黄色の間」の5つの展示室で九谷焼を紹介。ちなみにこの”五彩”は、伝統的な技法「九谷五彩」で施される5つの色彩にちなんでいます。

360年以上も前の九谷焼から近現代九谷の巨匠の作品まで

五彩館「紺青の間」の展示風景

「紺青の間」では、「九谷五彩」や「青手」など伝統的な作風の九谷焼を紹介。360年以上も前につくられた古九谷や、古九谷の作風を再現しようと試みた江戸時代後期の再興九谷など、九谷焼の歴史を形作ってきた名品を鑑賞できます。

五彩館「紺青の間」の展示風景。展示は360年以上前につくられた古九谷からはじまる。

九谷焼の歴史について、最上さんはこう説明しています。

「九谷焼は、江戸時代前期の1655年頃に加賀の大聖寺藩(※)九谷村で生まれました。加賀で陶石が発見されたのを機に、有田で製陶法を学んだ藩士が窯を開いたのです。この時代の九谷焼を『古九谷』と呼びます。ところが約50年後、窯は閉じられ、『古九谷』は生産されなくなりました。それから100年ほど経って、『古九谷』の作風を受け継いだ『再興九谷』が作られるようになり、現代の九谷焼へとつながっていきます」(最上さん)

※加賀藩の支藩

窯が突然閉じられた理由は諸説あるとのこと。「窯で使用するアカマツの薪を伐採することを藩が禁じた」「当時は窯の精度があまり良くなかった」など様々な理由が憶測されます。

三代德田八十吉「燿彩壺」

九谷焼といえば、昔ながらの絵付けを思い浮かべる方も多いかもしれません。筆者もその一人でした。ところが展示室を歩き、作家独自の個性が光る作品を目にするうちに、九谷焼へのイメージが覆っていくのを感じました。たとえば三代德田八十吉やそきち(人間国宝)の「燿彩壺」は、揺らめく色彩が印象的。三代八十吉は、祖父の初代八十吉から上絵釉薬の技術を受け継ぎ、試行錯誤を繰り返してグラデーションの色彩表現を編み出しました。

このように、古くから技法を大切にしながら、新たな表現や技法を開拓していった作り手の努力によって、九谷焼は多様化してきたのです。そして今、若手作家によって新たな九谷焼が生み出されているといいます。

豪華絢爛な赤絵九谷の世界を堪能

五彩館「朱赤の間」の展示風景

この華麗なる展示室は「朱赤の間」です。「朱赤の間」では、江戸時代後期の赤絵九谷を中心に名品を紹介。明治時代、輸出向けにつくられた赤絵九谷は、日本の外貨獲得の一役を担いました。その豪華絢爛さが欧米で人気を博し、九谷焼は「ジャパンクタニ」という名で親しまれます。特に評判だったのが、本金で彩る「金襴手」の作品でした。

五彩館「朱赤の間」の展示風景

鮮やかな作品がズラリと並ぶ展示室で、ひときわ目を引いたのが九谷庄三くたにしょうざ龍花卉文農耕図盤りゅうかきもんのうこうずばん」です。うつわ全体を覆いつくすように、緻密に描かれた花鳥や文様。そのなかに、何場面かにわたって農耕図が描かれています。美しさとともにストーリーが展開していく、絵巻物のような作品です。

九谷庄三「龍花卉文農耕図盤」 1816年~1883年 KAM能美市九谷焼美術館 五彩館蔵 撮影:塚本 茂樹
九谷庄三「龍花卉文農耕図盤」裏 1816年~1883年 KAM能美市九谷焼美術館 五彩館蔵 撮影:塚本 茂樹

「紺青の間」「朱赤の間」のほか、個展や企画展を開催する「紫の間」「緑の間」、九谷焼の制作工程を学べる「黄色の間」など、見ごたえがあります。

ちなみに、館内の作品は常設展に限り写真撮影OK。細やかな絵付けは、あえてカメラにおさめ、拡大してじっくり見ても良いかもしれません。

ミュージアムショップも必見

九谷焼の紙皿

ミュージアムショップでは、九谷焼の絵柄のマスキングテープ、一筆箋などを販売しています。最上さんのイチオシは、6枚セットで660円の九谷焼の紙皿。

「お正月などのハレの日やホームパーティーのときに、気軽に九谷焼の名品に料理を盛り付けたり、飾ったりして楽しめますよ」(最上さん)

二代浅蔵五十吉の代表作が一堂に会す「浅蔵五十吉記念館」

浅蔵五十吉記念館

五彩館の近くにある「浅蔵五十吉いそきち記念館」では、二代浅蔵五十吉(1913年~1998年)の代表作を展示しています。二代浅蔵五十吉は、九谷焼の伝統を受け継ぎながら、新たな技法や色彩表現を切り開いたことで称えられ、1984年に芸術院会員になり、1996年に文化勲章を受章しました。

展示室には、独自の造形や色彩の作品が悠々と並びます。なかでも、「五十吉カラー」と呼ばれる深い黄色の作品が味わい深く、目に焼き付きました。

浅蔵五十吉記念館の展示風景
二代浅蔵五十吉《残雪ノ松 飾瓶》1992年制作

開放感あふれる展示空間も心地よく、作品をじっくり鑑賞できます。実は、同館を設計した建築家・池原義郎(1928年~2017年)は、二代浅蔵五十吉と親交があったそうです。

作品はもちろんのこと、建築を目当てに同館を訪れる人も多いとのこと。最上さんは、「秋は紅葉が映え、冬はエントランス横の水盤に雪が積もるなど、季節によって異なる美しさを見せてくれます」と話していました。

五彩館」「浅蔵五十吉記念館」施設長の最上進さん。九谷陶芸村にあるモニュメントの前にて。手にしているのは、自身が制作した九谷焼の刀。

「職人工房」「体験館」で制作過程を覗く

職人工房で作陶する佐藤剛志さん

九谷焼が生み出される現場を覗くことができるのが、職人工房です。入場無料で職人の作業風景を見学できます。さまざまな道具、完成途中のうつわが所狭しと並ぶ工房に足を踏み入れ、職人技を間近で見ると、九谷焼がより身近に感じられました。職人からうつわを購入できるのもうれしいものです。

完成途中のうつわなどがずらりと並ぶ職人工房

九谷焼の制作過程を体感したい方は、体験館(※)もおすすめです。体験館では「絵付体験」や「作陶体験」のほか、本格的な陶芸教室も開催されています。

※2023年6月~2024年2月まで改修工事のため休館予定

お気に入りの九谷焼を探しに

「九谷陶芸村」の一角には、九谷焼を購入できる専門店が約10店舗立ち並びます。店舗ごとに取り扱う作品のカラーが異なるのが、面白いところ。伝統的な技法を駆使した作品、普段使いにもぴったりのモダンな作品など、様々な作品に出会えました。思い出の一品やお土産を購入したい方は、ぜひ立ち寄ってみてください。お気に入りのうつわに出会えるはず。

ギャラリー結
秀幸九谷(株)

九谷焼の歴史を学びながら名品と向き合い、制作風景を見学し、実際に作って、お気に入りのうつわに出会う――。九谷陶芸村は「知りたい」「見たい」「作りたい」「買いたい」という、うつわに関するあらゆる「希望」を満たしてくれるスポットです。うつわ好きは間違いなく一日中楽しめることでしょう。知的好奇心を満たす旅、感性を揺さぶる旅がしたい方にも絶好のスポットです。

登り窯
KAM能美市九谷焼美術館(九谷陶芸村)
住所:〒923-1111 石川県能美市泉台町南56
開館時間:9:00〜17:00
※五彩館・浅蔵五十吉記念館は16:30、体験館は16:00までに入館
入館料:五彩館・浅蔵五十吉記念館共通入館券 一般430円/75歳以上 320円 高校生以下は無料
職人工房・体験館は入館無料
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日休館)、年末年始(12月29日〜翌年1月3日)、臨時休館(展示替え等のため)
アクセス:JR能美根上のみねあがり駅(金沢駅から北陸本線で約25分)よりタクシーで約15分、またはバス(連携ルート(日中))乗車、泉台コミュニティセンター下車、徒歩7分
詳しくは同館の公式サイトへ。

(読売新聞美術展ナビ編集班・美間実沙)

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