宝石自然が作るキセキ - 読売新聞オンライン

　自然のままの原石から豪華（ごうか）なジュエリーまで――。多彩（たさい）な宝石（ほうせき）の世界を紹介（しょうかい）する特別展（とくべつてん）「宝石　地球がうみだすキセキ」が６月１９日まで、東京・上野の国立科学博物館で開かれています。美しさだけでなく、科学的な側面からも宝石の魅力（みりょく）に迫る展覧会（てんらんかい）を取材しました。

　会場に入ると、まず目に飛（と）び込（こ）んでくるのは「巨大（きょだい）アメシストドーム」。外側から見ると何の変哲（へんてつ）もない石のように見えますが、内側は紫（むらさき）色に輝（かがや）き、圧倒（あっとう）されます。これこそ、自然が作り出したキセキ！　高さ２・５メートルの巨大な原石の前で、入場者は写真を撮（と）ることもできます。

　展示（てんじ）は五つの章に分かれていて、「原石の誕生（たんじょう）」「原石から宝石へ」「宝石の特性（とくせい）と多様性（たようせい）」「ジュエリーの技巧（ぎこう）」「宝石の極（きわ）み」の順で進みます。展示されている色とりどりの宝石はどれもとても美しく、種類の多さに驚（おどろ）かされます。例えば、紫外線（しがいせん）を当てると光る石は暗室に置かれ、暗闇（くらやみ）の中に浮（う）かぶ不思議な光を見ることができます。アニメーション映画（えいが）「天空の城（しろ）ラピュタ」の幻想的（げんそうてき）なシーンを思い浮かべました。

　国立西洋美術（びじゅつ）館に寄贈（きぞう）された個人（こじん）コレクションの指輪約２００点、世界的なコレクションを誇（ほこ）るアルビオン　アートからの出品作品など、紀元前にさかのぼり、現代（げんだい）までの宝石の歴史を知ることができます。私（わたし）たちが見ても美しいと感じるようなデザインが多く、時代が変わっても、宝石を美しいと感じる人間の気持ちは変わらないのだと思いました。

　今回の展示は、原石ができる仕組みや宝石の輝きの秘密（ひみつ）などを、科学的に解（と）き明（あ）かしてくれるのが特色です。特に、原石の美しさに注目しているのがポイントです。監修者（かんしゅうしゃ）の一人で、国立科学博物館の研究主幹、門馬綱一（もんまこういち）さん（４２）は、「宝石というのは、原石を採掘（さいくつ）し、磨（みが）いて美しくしたもので、それを組み合わせて宝飾品（ほうしょくひん）にします。展示では、地球が作り出した原石が持つ自然のままの美しさも見てほしい」と話します。

　ただの石にしか見えなかったり、とてもよく似（に）ていたりしていても、「高度な分析（ぶんせき）が可能（かのう）な機械を使って、成分や光がどう通るかを調べてみると、微妙（びみょう）な違（ちが）いが分かる」そうです。カットの仕方によって宝石の色や輝きが違って見えること、輝きときらめきの違いなども、とても興味深（きょうみぶか）かったです。

　鉱物（こうぶつ）の専門家（せんもんか）である門馬さんが、その道を目指すようになったきっかけは、小学生の時にたまたま手にした鉱物の標本でした。それまでは砂利（じゃり）ぐらいしか知らなかったのに、「同じ石でも、こんなにきれいな石が自然界にあるんだ」と驚いたそうです。それから、自分の手でいろいろな石を集めていくうちに、もっと調べたいと思うようになったとのこと。最初から、原石へのこだわりがあったことが分かりました。

　多様な宝石の数々に触（ふ）れ、これほど美しいものを作り出す地球の神秘（しんぴ）と原石をより美しく見せる人間の技術（ぎじゅつ）に感動しました。実際（じっさい）に自分たちの目で見た宝石の輝きやきらめきは、息をのむほどです。私たちはまだ宝石を身につけるような年齢（ねんれい）ではありませんが、いつか、この芸術品を手にしてみたいと思いました。