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心支える作品 笑顔の現場が作る アニメ制作会社員の思い - 朝日新聞デジタル

 さいたま市の閑静な住宅街にあるアニメ制作会社「亜細亜堂」。制作スタッフの司令塔を務める男性(46)はアニメが大好きだったが、大学卒業後は大手メーカーに就職した。回り道をして憧れの世界に入って20年、アニメを愛するがゆえに心がけていることがある。

 プロデューサーとして制作を仕切る男性は「私より作品に注目してほしい」と、名前を出さないことを条件に話を聞かせてくれた。

 大阪府で生まれ育ち、テレビアニメに熱中した。「機動戦士ガンダム」シリーズや「Dr.スランプ アラレちゃん」が放送された翌日、学校で友人と感想を話し合い、盛り上がった。高校時代も帰宅後はテレビにかじりついた。

 人の手によって描かれたキャラクターが、命を吹き込まれたように画面の中で生き生きと動くさまにひかれた。大人になるにつれ、放送された回ごとに、どんな人が作画を手がけたかにも注目するようになった。

 2002年に亜細亜堂に入り、同社が手がけるテレビアニメ「かいけつゾロリ」に関わった。放送前の試写で、エンドロールの中に自分の名を見つけ、「やっとアニメに関わり、作品を形にできた」と達成感を感じた。

 ここにたどり着くまでには曲折があった。関西の大学を卒業すると、「学んだ知識を生かしたい」と考え、地元の電機系の大手メーカーに入社した。アニメは仕事でなく、趣味にとどめるつもりだった。

 だが、その気持ちは1年後には変わっていた。疲れて帰宅し、夕飯を食べながらテレビアニメを見ている時だけは心がやすらぎ、仕事のことを忘れられた。「自分も、人の心を支えられるアニメを作りたい」。転職活動を始めた。

 アニメ制作会社には中小企業が少なくない。親には当初、反対されたが、迷いや不安はなかった。

 亜細亜堂を選んだのは、設立者のひとりが「ドラえもん」シリーズなどで監督を務める芝山努さん(80)だからだ。芝山さんは、作品の設計図にあたる「絵コンテ」を、完成された漫画のように細かく描き込む技術に定評がある。男性は子どもの頃、芝山さんがアニメーターとして関わった「ガンバの冒険」を見て、キャラクターの動きに魅了された。

 入社後は制作途中の原画を担当者から回収したり、制作の進行スケジュールを管理したりする仕事を任された。

 制作の舞台裏を見るのは新鮮だった。一つの作品に自分の予想以上に多くの人が関わっていると知った。あこがれの芝山さんにも社内で顔を合わせた。作品のアイデアを思いつき、その場で色鉛筆を手にすばやく描き出す様子に圧倒された。

 周囲では制作側に回ると、私生活でアニメを見る機会が減る人もいるが、男性は今も週に十数本、録画して見ることを欠かさない。

 14年にプロデューサーに昇格し、アニメ化の企画立案にも関わるようになった。いい作品を生み出していくために「社員が笑顔で働ける現場にしたい」という思いが強くなった。

 繁忙期には、スタッフが会社に泊まり込んで作業をする日もあったが、今はスタッフが無理な働き方をしなくてすむスケジュールを組み、仕事量が多くなりすぎないように気を配る。

 「見る人が笑顔になれるような作品をつくり続けたい」。そのためには、自分たち制作側がアニメと笑顔で向き合えるような環境が欠かせない。そう思うからだ。(森下友貴)

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