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【ダニーの食読草紙】謎解きマスターが作る「桜飯」 - 産経ニュース

三軒茶屋の駅から商店街のアーケードをくぐり、通りから外れた細い路地へ。その先、道が行き詰まる手前にあるのが「香菜里屋(かなりや)」。ヨークシャーテリアのような風貌と称されながら、本人もヨークシャーテリアの刺繍の入ったエプロンを着用しているマスター・工藤哲也が営むビアバーであり、度数の違ういくつものビールと仕入れによって異なるマスターの料理、そして謎解きが飛び交う店である。

『香菜里屋シリーズ』は、そんな架空の店を舞台にした短編推理小説集のシリーズだ。マスターの工藤はビアバーを切り盛りしながら、客が持ち込むさまざまな謎を解き明かす探偵役を務める、現場にはいないタイプのいわゆる安楽椅子探偵である。

一人で店を回している工藤は作る料理も多岐にわたり、鮪のトロを賽(さい)の目に切りガーリックバターで炒めた酒のつまみから、酔いにぴったりのベーコンとセロリの温かなスープ、また〆(しめ)の料理など謎解きが関係なくとも是非食べてみたい料理が揃っている。

中でも、二巻目『桜宵(さくらよい)』の表題作にて供される「桜飯」。春蛸の良いものを出汁ではなく岩塩と色付けの醤油だけで炊き上げた蛸の炊き込みご飯は、シンプルながら箸が止まらなくなるような味わいだろう。

探偵役のビアバーのマスターという職業柄か、人情ものの側面も持ち合わせる『香菜里屋シリーズ』。連作短編集の上、シリーズ全体でも四冊とすっきり読むことができる。寒さが一段と厳しくなり、新型コロナもまた増えてきた今日この頃の心をほっと温めるのにいかがだろうか。(将棋棋士 糸谷哲郎八段)

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